ASML Q3 22決算・米国の新たな半導体対中国規制など

IPO米国株チャート

お世話になります。まず最初に弊ブログタイトルを『半導体24時』に変更しました。

尊敬する岐阜暴威さんのYoutubeチャンネルで一時使われていたサムネイルから取っています。URLとかはまだこのままです。いずれ移行するかもしれません。気が向いたら。多分。

それでは本題です。

ASML Q3 2022決算
FY22 ASML Q3決算
→売上:  EUR 5,778M … YoY +10%
(うちEUV露光装置売上: EUR 2,170M YoY -2.2% / EUV露光装置単価 EUR 180M YoY +21%)
→Gross Margin: 51.8% … QoQ +2.7ppt / YoY Flat
→Operating Margin: 33.5 %  … QoQ +3.1ppt / YoY -3.1ppt
→EPS: €4.29 … QoQ +21% / YoY +0.7%
⇒Net Booking: EUR 8,920M … QoQ +5.4% / YoY 44%
半導体市場は既に下降局面に入っていると騒がれ、また様々な大手半導体メーカーが設備投資の減額をアナウンスしていますが今のところASMLの売上や利益率に大きな影響は出ていないようです。

半導体受託生産最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の7-9月(第3四半期)の利益はアナリスト予想を上回った。半導体業界がリセッション(景気後退)の可能性と米国の貿易規制強化に備える中、同社の収益力の高さが鮮明となった。2022年の設備投資計画については約360億米ドル(約5兆3000億円)と、従来から10%程度引き下げた
引用 『TSMCの7-9月利益、予想上回る-今年の設備投資計画は10%減額』

それどころか、Q3の新規受注額(Net Booking)はEUR 8,920Mと最高額を更新しています。個人的にCAPEXの減少は懸念していましたがASMLが手掛けるEUV露光装置を使うような最先端の部分は息の長いテーマなので影響は比較的に少ないようです。例えば下記はMicronの決算発表のCapexに関するコメントです。

・Micronは23年の投資を大幅に抑制、今年比で-30% Capex減額。しかし新工場投資は2020年代後半を見据えて2倍に(We made significant reductions to capex and now expect FY 2023 capex to be around $8 billion, down over 30% Y/Y; construction capex to more than double Y/Y to support demand for second half of decade)

・23年の前工程投資は主に新世代プロセスの開発向け(FY 2023 WFE capex is for developing technology capability of our leading nodes and new product introduction)
→既存テクノロジーの生産ライン増設は抑制し供給を引き締めるが、もっと将来を見据えた新世代の開発は継続
引用 – Micron “FQ4 Earnings Call Prepared Remarks”

また、顧客である半導体メーカーからも一部納入をPush Outさせる旨のリクエストが来てることは確からしいですが、Push Outされた分の装置を早く納入してほしいという要望を出す顧客がまだまだ居るようです。

There is a few customers that are indicating a preference for some delay but the lion’s share of the customers are really pushing and they are raising their hands to say if there is a delay someplace else, then please get the tools to us even earlier
引用 – ASML Q3 22 Video Transcript

Q4/FY22 Full Year Outlookと受注額・BB Ratioの推移
また、ASMLによるとQ4/FY22通年のOutlookは下記のようになっております。

Q4 売上: EUR 6.1M – EUR 6.5M … YoY +27.3%
Q4 粗利率: 49% … YoY -5ppt
FY22 売上: EUR 21.1B … YoY +13.4%
FY22 粗利率: 50% … YoY -2.7ppt

下記グラフはASMLの決算資料を基に筆者が作成した四半期売上と受注額・BB Ratioの推移で、売上はInstalled Base Management (サービス売上)、EUV露光装置、EUV以外の露光装置(ArF液浸など)に区分しています。一番右の棒グラフはQ4 Outlookでうち装置売上の内訳が不明なため水色で表示しています。

受注額とBB Ratioの推移は下記のようになっております。BB RatioとはBook to Bill Ratioの略で同期間における販売額に対する受注額の割合(「受注額÷販売額」で計算)です。割合が1を超えている場合、受注が強く将来の需要がまだまだ根強いことが図り取れます。ASMLのBBレシオはFY20 Q4以降1以上を継続的に超えています。

特に高い受注額の背景は0.55NAの高NA EUV露光装置の受注が寄与していると考えられます。

Intelが超微細プロセスの量産に対応する高NA EUV露光装置をASMLに発注
IntelとASMLは1月19日(現地時間)、IntelがASMLの現行の開口率NA=0.33のEUV露光装置の次世代機となるNA=0.55の高NA EUV露光装置の量産対応機「TWINSCAN EXE:5200」の購入に向けた最初の発注を行ったことを明らかにした。

news.mynavi.jp

ASML EUV露光装置の単価と出荷台数の推移

続いてASMLの稼ぎ頭であるEUV露光装置の四半期ごとの出荷台数と単価をグラフにしました。なお単価の算出方法は単純に四半期決算資料で開示されているEUV露光装置売上を出荷台数で割って算出しています。

EUV露光装置の単価ですが、現在すでに1台当たり180M EURと200億円を超える価格となっています

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Anago

Anago

欧州在住の半導体企業に勤務されている方です。半導体市況&決算情報をツィッターやブログでシェアされています。

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