TSMC 2022年Q1決算まとめ

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大変お世話になっております。

台湾の半導体受託製造最大手、TSMC (台湾セミコンダクターマニュファクチャリング/$TSM)の2022年Q1(1月ー3月期)決算発表がリリースされましたのでポイントを記事にて纏めたく思います。

【売上成長】
FY22 Q1売上結果: $17.57B … QoQ +11.6% / YoY +36%
FY22 Q2売上見込み: $17.6B – $18.2B … QoQ +1.9% / YoY +34.6%
FY22 通年売上: +20%中盤~後半の成長見込み
→粗利率は50%台、営業利益率は40%台を維持
【CAPEX(設備投資)】
FY21 $30B
FY22 $40B – $44B
→前期見通しから変わりなし

TSMC Q1決算結果

TSMCのFY22 Q1決算結果とFY22 Q2のガイダンスです。

【Q1決算結果】
売上: $17.57B … QoQ +11.6% / YoY +36% 
Gross Margin: 55.6% … QoQ +2.9ppt / YoY +3.2ppt
Operating Margin: 45.6% … QoQ +3.9ppt / YoY +4.1ppt
EPS: NTD 7.82  … QoQ +22% / YoY +45.1%
Q1の決算結果はご覧の通り前年同期比+36%と非常に高い成長を出したと思います。また、QoQでも売上が+11.6%も伸びている点は驚きです。通常半導体はQ3/Q4と比べるとQ1/Q2の需要が弱い傾向にありますので売上がQoQでは凹む場合が多いです。しかし、その内容を見ていくと依然として強い半導体の純需要だけでなく値上げによるカサ増し、戦争等による供給混乱を見越した買い溜め需要が寄与している可能性があります。この点は後ほど説明します。

続いてQ2のガイダンスです。

【FY22 Q2ガイダンス】*変化率はMid Point基準
売上: $17.6B – $18.2B / QoQ +1.9% & YoY +34.6%
Gross Margin: 56% – 58% / QoQ +1.4ppt & YoY +7ppt
Operating Margin: 45% – 47% / QoQ +0.4ppt & YoY +6.9ppt
CQ2も本来なら需要は弱いですがQoQで売上は微増、YoY成長率も継続して30%台中盤を見込んでいます。利益率もさらに上がります。ただ、TSMCは2022年通年の売上成長率を20%台中盤〜後半と見込んでおり、裏を返すと需要が強いQ3/Q4にYoYの売上成長率に減速がかかることが示唆されています。この点についても後述です。

下記はTSMCの決算資料を元に筆者が作成した四半期の業績推移です。

また下記はTSMCの四半期ごとのウェハ出荷枚数とウェハの平均単価の推移です。基本的にウェハは右肩上がりの出荷枚数になっていますが、単価はQ4→Q1と下がることが多いです。しかし、今期に限ってはウェハ単価が21年 Q4→22年 Q1で跳ね上がっています。これは後述する7nm/5nmといった先端プロセス品のプロダクトミックスの寄与と値上げの影響ではないかと推察されます。

前回TSMCの最大20%という大幅値上げがアナウンスされたのが昨年8月末です。そこから実際に各顧客と値上げ交渉が妥結し、実際出荷される製品の単価に影響が出始めたのは昨年末頃くらいであると考えられますのでQ1というオフシーズンにも関わらず売上・ウェハ単価が成長しているのはこの値上げの影響が大きいのではないか?と考えています。

台湾TSMC、半導体最大20%値上げへ 最終製品にも影響
【台北=中村裕】半導体大手の台湾積体電路製造(TSMC)が最大20%の値上げを実施することが、25日分かった。同日、台湾の顧客などに通知した。一度の値上げ幅としては、過去最大とされる。値上げ幅や時期などの詳細は企業によって異なるようだが、25日に通知を受けた一部企業では、値上げは即日実施とされたという。台湾大手の自由時…

www.nikkei.com

TSMC プロセス別売上

続いてTSMCのテクノロジー別の売上を見ていきます。

スマホやPC・サーバーのロジックチップなどに使われる5nmと7nmの割合が50%を占めています。

売上推移を見ると下記のような形です。7nm/5nmも凄いですが、青のそれ以外のプロセス(上記ブレイクダウンで言う16nmより古いプロセス群)の売上も急増しています。7nm+5nmの売上YoYは+38%(7nmは+16%、立ち上がったばかりの5nmは+94%)ですがそれ以外のプロセスのYoY売上成長率も+33%です。これらのプロセスは先端品に比べて積極的な設備投資をしていないにも関わらず強い需要と値上げなどを背景に大きな売上成長を実現できたと考えられます。

また、上記グラフではそれ以外とざっくりとくくってしまいましたが、特に28nmや45/55nmといったプロセスはTSMC以外のファウンダリも製造しているプロセスです。UMCやSMICといったファウンダリが上がりますが、そのようなプロセスをメインに事業を行っているところは利益率が相対的に低く、収益性の底上げが課題でした。

各ファウンドリのプロセス別売上情報はたいかぶさんのブログをご参照ください。

TSMCのアプリケーション別売上比率

続いてTSMCのエンドアプリケーション別の売上構成比率を見てみます。エンドアプリケーションの区分は下記のようになっています。

Smartphone→スマホ / AppleやQualcomm
HPC→High Performance Computing / AMDやNvidia
IoT→IoT
Automotive→車載
DCE→Digital Consumer Electronics (コンスマー家電)
Others→Consumerや産業機械など

従来TSMCはスマホの売上比重が非常に大きかったですが、近年はHPC向けの割合も相当上がってきています。Q1は逆転していますね。スマホはAppleやQualcomm、Mediatekといったお得意企業を抱えていますが、いかんせんシクリカル性が高いのでPCやサーバー・データセンター向けの売上の柱が育ったことはTSMCにとっても非常に良いことだと思われます。

QoQの各アプリケーション別売上成長率は下記のようになっています。本来対Q4で弱いはずのスマホ含めて全てのセグメントでQoQで増収となっています。

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Anago

Anago

欧州在住の半導体企業に勤務されている方です。半導体市況&決算情報をツィッターやブログでシェアされています。

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